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2008.12.03

NICUが増えるのはいいけれど。


世の中、秋春制反対やら戦力外通告やら、たくさんサカーネタはあるのですけれども、何となくな気分でちょっと方向が違う件を書いてみました。


早産男児、7病院拒否 10日後死亡 札幌で昨年11月
これを受けて札幌市では、
未熟児拒否 札幌市「申し訳ない」 NICU増床の方針
だそうです。
しかし今年の始め頃に、こんな報道があったことを覚えている方は、どれだけいるでしょうか。
改善なければ2次救急撤退/札幌市に産婦人科医会通告
この件について産婦人科医会側は、夜間急病センターに産婦人科医を常勤させ、本当に二次・三次救急以上の処置が必要な症例を選択して二次医療機関に搬送してほしい、という提案をしました。しかし当初札幌市は、夜間急病センターに医師1名を常勤させるに必要な7000万円の予算が確保できないことを理由に、産婦人科医会の通告を突っぱねました。
#この「7000万円」という数字の中身には、当然産科・婦人科領域の一次救急に対応するためのハード面整備の予算も含まれ、すべてが医師招聘にかかる人件費用ではない、ということは、明記しておくべきでしょう。産婦人科医会が派遣医師に対して高額報酬を支払えなどと、吹っかけたわけでは決してありません。
怒った産婦人科医会は、具体策が行政から提示されないのならば、今年9月に産婦人科二次救急医療から撤退するとの声明を出す騒動にまで発展しています。
今回の出来事で、NICU施設を拡充する方向に動くのは間違いなくいいことだと思います。
でも、それには金がかかるのです。
保育器などを含むハード面の整備はもちろんのこと、それを動かすマンパワー(医師、看護師など)の確保とその人件維持費、ハード面を維持しバージョンアップしていくための物品費用・・・
それに、新生児医療には純粋な医療行為だけでなく、ミルクを上げたり赤ちゃんとスキンシップを図り可能な範囲での正常発育に近づけることを目指した育児行為も必要です。また、NICUのみを扱う施設は非常に少なく、ほとんどの場合小児科の一般病棟の中にNICUも併設されています。
そこまで考慮した場合、いわゆる「定員」の看護師の人数だけでは、とても十分な対応ができない。
そんな現状も、耳にしたことがあります。
NICU病床を増やすことによって発生する金銭支出。
果たして、産婦人科医会の要望を突っぱねた、7000万円という金額の範囲で済むのでしょうか?

私は、到底そうは思えないんですけど・・・???
また、今回は「母体は助かったけど児を救えなかった」ことばかりがクローズアップされて、NICUの拡充という方向に話が進んでいるようですけど、周産期医療は母体と児の両方が大事。どっちか一方が拡充されればよくて、もう片方はどうでもいい、という話にはならないはずです。
札幌市が、新生児救急だけが大事で産科医療なんてどうでもいいと考えている、とは思いたくないし、実際予算を確保するのも大変なんでしょう。でも、表面的に出てくる事象からだけ考えると、こういう思いが出てもそれほどおかしくないように感じます。
NICU拡充のための予算が確保できるのなら、平行して母体と出産前の胎児を管理する産科医療に対しても、十分な予算を確保して体制を整えるべきではないかな。
そう思った、穏やかな昼下がりでした。
ま、この件に関連して、たらい回し報道・受け入れ拒否報道に対しての思いだとか、医療訴訟への思いだとか、他にもいくつか思うことはあるのですが、それはまたそのうち気が向いたら書くかもしれないし書かないかもゴニョゴニョ。

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東京の医療は既に崩壊してるのに…。(復刻)

■一部改修で再UP。
以前削除されたエントリの魚拓が見れるようになったので、FAQの一部を改修(東京の救急事情の部分を追加)して再UP。
あの…

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